エリたちの冒険1
無人島の冒険:オリオン島への試練
広大な太平洋の真ん中に浮かぶ、名もない無人島。そこに、エリとアオリという仲良し兄妹と、船乗りの父親が暮らしていた。一家の何よりの楽しみは、毎週日曜日の「遠出」だ。まるで遊園地に行くかのように、船に乗って沖へ繰り出すのが習慣だった。だが、いつものように船を出した日、彼らを思わぬ出来事が襲う。
「それじゃ、出発するか!」
父の言葉に、エリは元気いっぱいに叫んだ。「やったー!今日はお父さんの船に乗れる日だ!オリオン島に行くんだもん!」
わくわくしながら船に乗り込むと、空の様子がおかしいことに気づいた。みるみるうちに雲行きが怪しくなり、鉛色の雲が空を覆い始める。
「大変だわ、みんなに知らせなきゃ」
空が暗くなるにつれ、兄妹の笑顔も次第に消えていく。不安が募り、アオリはぽつりと呟いた。「僕、行かないよ!」
エリも不安げに父を見上げた。「ねえお父さん、怖いよね?」 アオリも同意するように頷く。「怖いね」
父は力強く言った。「大丈夫だ、アオリ!お父さんは、船の資格を17個も持っているんだぞ!」
「それは分かってるんだけど……」アオリの声は震えていた。
その時、彼らの目の前に信じられない光景が広がった。
あれは、もしかして鳴門の渦潮?
父の顔が、みるみるうちに厳しくなった。アオリは怒られるのかと思ったが、父は何も言わない。ただ、その表情は恐怖に染まっていた。
目を開けると、巨大な渦潮が船の行く手を塞いでいた。エリとアオリにはそれが何なのか分からず、父に尋ねた。
「お父さん、あれ何?」アオリが震える声で問う。 「あれは、渦潮だ」父は息を呑むように答えた。 「入ったら出られないよ!」エリの声が悲鳴に変わる。 「こうしちゃいられない!よし、方向転換だ!オリオン島は後回し!」
オリオン島へは危険がいっぱい。オリオン島へは、行かないの?
エリは自分の耳を疑った。楽しみにしていたオリオン島を諦めるなんて。
「そんなのは後だ!」父の声は焦っていた。 「そんなのって……」
エリはしゅんと肩を落とした。しかし、アオリは少し安堵したようだった。
絶体絶命。逃げろー!
船は全速力で走り出した。しかし、渦潮はすぐ後ろまで迫っていた。絶体絶命の状況で、彼らを乗せた船は渦に飲み込まれていく。
父の大切な船は、あっという間に粉々に砕け散った。三人は意識を失い、冷たい海へと投げ出された。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
エリが目を覚ますと、波打ち際に打ち上げられていることに気がついた。身体が重く、頭がぼんやりする。父とアオリの姿が見当たらない。
しばらく辺りを探し回っていると、ぐずり泣く声が聞こえてきた。波打ち際に目をやると、そこにアオリがいた。泣きじゃくる声は耳に痛いほどだったが、エリだって本当は泣きたかった。父がいないことに気がついたエリの心臓は、激しく脈打った。
「お父さんがいない!」
アオリの涙が、一瞬止まった。だが、次の瞬間、まるで堰を切ったかのように大粒の涙が頬を伝い始めた。泣き虫だけど優しいアオリは、ぐずりながらもエリの言葉に大きく頷いた。
「まずは、お父さんを探しに行こうよ!」エリが言うと、アオリは精一杯、こくこくと頷いた。
「お父さん!」「お父さん!」「お父さん!」
二人は声を枯らし、父の名前を叫び続けた。
その声に応えるかのように、林の陰からひょっこりと父が姿を現した。父に違いはないけれど、エリはどこかおかしいと感じた。
アオリと合流し、二人は驚きのあまり目を見開いた。
父親が、二人いるのだ。
実は、エリが連れてきた父親は、キツネが化けた偽物だった。だが、エリはそのことをまだ知らない。
キツネ?しかも、二人?
突然、二人の父親が現れたことで、エリたちは混乱した。
「どっちが本当のお父さんなんだ?」エリが震える声で尋ねた。
「こっちがお父さんだよ」 「いや、こっちがお父さんだよ」
二人の父親が同時にそう言い、エリとアオリの頭の中はごちゃごちゃになった。
どうやって見破るのか?どちらかが、偽物だ。
アオリは良いことを思いついた。お父さんの手首には痣があるはずだ。
まずはアオリが連れてきた父親の手首を見た。確かに、そこには見慣れた痣があった。
次に、エリが連れてきた父親を調べようとしたその時、キツネはまた化けて、手首に痣を作り出した。再びアオリとエリは分からなくなった。
どうやって見破ったか?お前が、偽物だったのか!
今度は、エリの番だ。エリは父に言った。
「早口言葉を唱えてみて!」
父は早口言葉の名人だ。それに比べて、キツネはあまり人間の言葉を知らないはず。早口言葉の競争が始まった。
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