南千住はチャッカマンのまちだった

2021/06/11

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南千住(みなみせんじゅ)っていうと

南千住(みなみせんじゅ)っていうと
しょんべんくさいまちだったよ


北千住の一駅南にある駅だ
山谷(さんや)って呼ばれていて
大阪の釜ヶ崎、東京の山谷、横浜の寿町(ことぶきちょう)って言われている
日本3大ドヤ街(どやがい)ってよばれてるらしい
ドヤ街のドヤって「宿(ヤド)」のさかさ読みのことだ
宿が多いのは

日雇い労働者の街だからで

日雇い労働者の街だからで
はいよ、4千円くらいだよ、バンにのったのった


ここらあたりの日雇いは、
シゴトをするのに名刺も身分証明書もいらないらしい
それなので、失踪したひととか、隠れて生きていこうとしている人には
住みやすい生活環境なのかもしれない
見たことはないけど、駅前のハローワークみたいなところに
明け方あつまっていると
スカウトがきてマイクロバスに乗せて行ってくれるらしい
そんな街だから

ドヤ街って家賃が安いんじゃないか

ドヤ街って家賃が安いんじゃないか
トラみたいな人がたくさんまちにいる


って思ったんだ
ところがなんと
マンガ喫茶のほうが安いみたいなんだよ
さらに、さらに、もしかしたら
普通のビジネスホテルのほうがまだ安いのかもしれない
南千住の駅近くのヤドは
外から見ると、木造2階建てなんだけど
同じ1間(ひとま)なのに、上下2段になっているらしい
(2階建てだったら4階分の床面積がある?)
同じ大きさの木造アパートと比べると

人口密度が2倍になるような

人口密度が2倍になるような
満員でーす!


仕組みになってるそうだ
それで家賃が高いんじゃあ利用する人も少ないんじゃないかなぁ
たぶんだけど身分証明書がいらないから便利なのかもしれないって聞いたよ
普通のホテルだったら
なんかのために、自宅の連絡先を書いておくけど
このヤドだったら住所不定でもOKなのかもしれない
保険証とか運転免許証とか、身分証明できるだけでも価値があるんだね
マンガ喫茶だって、本人確認できる書類が必要だしね
で、どうして今回はドヤ街の話をしてるかというと

ボクも山谷に住んだことがある

ボクも山谷に住んだことがある
うえの段がやっぱりランク高い


からなんだ
そのアパートは住民たちから
木筋土(もっきんつち)クリートって呼ばれてた
(バカボンパパがいったセリフからきてるよ)
正式には木造モルタルの築50年くらいのアパートなんだ
トイレは共同、風呂はなし
二階に下町育ちの靴屋のおいちゃんが住んでいた
(なまえはしらないんだ)
そのおいちゃんによると
4畳半一間の家賃が2万円だっていってた

山谷って東京の下町だ

山谷って東京の下町だ
おだんごも、いただいたよ


だから、二階のおいちゃんも江戸っ子っぽいしゃべりかたをしていた
それでよく「そばゆでたからいっしょにどうだ
なんて、さそわれた
そのそばつゆに生たまごを1個うかべて
じゅるじゅる食べる
おいちゃんからその時に聞いた話だと
中学しか出てないっていってた
靴ゴムのプレスを一日中やっていて
工場でNHKラジオ第二を聞いているそうだ
「英語ってのも、なんだな、ラジオもおもしれぇな」
なんていってた
職場でもラジオきいてるみたいだけど
おいちゃんのお部屋にもテレビがないからラジオなんだね
南千住の駅から歩いて25分
だから正確には山谷じゃなかったかもしれない
おいちゃんは靴屋の給料で
念願のバイクをついに買って
ついでに無線も買っちゃたんだ
無線機を手に持ってはじめて気がついたみたいなんだけど
「おれ、ともだちがいないのか」
友達がいないので、ボクが無線の相手を頼まれた
「一緒にツーリング行こうか」
「いこいこ、おもしろそー」
ボクはその無線をつけて
屋根やへいをつたってバイクの先回りができた
無線機で、いろいろ案内してもらった

白髭橋(しらひげばし)っていうのがあって

白髭橋(しらひげばし)っていうのがあって
よんだか?


そこを渡ったのもその日が初めてだった
いきなり狭い路地の古い町があらわれた
おかげで、ボクはひょいひょい屋根を飛び越えて歩けるようになった
言問橋」ってしってるかな
げんもんきょう?って思ってたんだけど、ことといばしって読むんだよ
浅草寺」はせんそうじって読む
これはしらない人が「あさくさでら」って読んじゃうからね
おいちゃんにおしえてもらったんだ

おいちゃんのバイクはいいあんばいに
とうまわりして狭い路地をぐるぐるまわっていた
「前方にいぬ、発見、どうぞ」
「りょうかい、右旋回しまーす、どうぞ」
まるで小学生だ
南千住の駅前には

ボランティアが運営している食堂もあるみたいだ

ボランティアが運営している食堂もあるみたいだ
こんな高級なものは出ないよ


そこに清楚なシスターもいらっしゃったりする
おいちゃんとその食堂に行ったときに
シスターに感銘を受けてその食堂の常連にもなった
そのボランティアの食堂って食事代が安いのもあるけど
ボランティアの炊き出しを
数か所でやっているらしい
その食堂の近くだったんだけど
あの「マザーテレサ」の修道院も同じような活動をしているらしい
(ミッショナリーオブチャリティっていうんだってね、神の愛の宣教者会)
こちらはシスターじゃあなくてブラザーの会らしいけど
どちらも炊き出しは
公園とか、白髭橋でやっているみたいだった
ボクはいったことないから場所や時間はわからない
世の中、しっかり助け合いしてくださっている人もいらっしゃるってことだね
ところで

荒川のほとりにガスタンクが3基ある

荒川のほとりにガスタンクが3基ある
ガス+カミナリ=チャッカマン


ボクたちの木造アパートは
そのガスタンクの対岸にあるんだ
ある日、木造アパートの屋根の上から荒川を眺めていたら
ガスタンク1基にもれなく1本ずつ避雷針が付いていることに気がついた
それで、バイク乗りのおいちゃんに
「ガスタンクに避雷針ってどういうこと?」ってきいてみた
バイク乗りのおいちゃんは
「いままできがつかなかったけど、チャッカマンみたいなもんだなぁ」
って、感慨深そうにいってた
だから、ボクは早めに引越しちゃったんだ
ちょっとこわいじゃない
おいちゃんは、今もそこに住んでるみたいだ
だけど、靴屋のプレスはやめて、もっと稼ぎのいい
「給水タンク車の運転」をやってるって
ボランティアのシスターから聞いた
(おしまい)
 

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