人工呼吸器が必要になったときの生活は?>QOLが低下、横隔膜ペーシングに頼るのも一案

2023/08/22

Diary

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何らかの理由で人工呼吸器を使うことになった人から「痰の吸引がとても苦痛だった」と聞いた。人工呼吸器が必要になったとき、本人や家族が一度は考える横隔膜ペーシングについて調べてみました。「自然なままでいかせてあげてください」という前に、こまっている人に伝えてあげてほしい。

このような疑問にお答えします

✓横隔膜ペーシングは日本でも使えるのか?
✓横隔膜ペーシングのしくみは?
✓横隔膜ペーシングの良いところ、悪いところは?
✓横隔膜ペーシングで日常生活気を付ける点は?
✓横隔膜ペーシングはすべての人が使えるのか?

人工呼吸器が必要になったときの生活は?>QOLが低下、横隔膜ペーシングに頼るのも一案

事故や病気で人工呼吸器が必要になったとき、生活の質(クオリティオブライフ)が極端に低下して、意識がある人なら「もういい、殺してくれ」と思うのだそうです。

そう話してくれたある人のお父様が「横隔膜ペーシング」にたどり着いた話を聞かせてくださいました。

横隔膜ペーシングは日本でも使えるのか?

横隔膜ペーシングは2019年に保険収載されています(保険医療として使用可能)。

ただ、適応疾患は「脊髄(頚髄)損傷」と「中枢性低換気(症候群)」です。

なにか足りない?と疑問に思われる人は、社会的なアンテナが高い人ですね。

海外ではALS(筋萎縮性側索硬化症:指定難病2)も使用されているのですが、日本国内では適応外となっています(使用できません)。

The NeuRx Diaphragm Pacing System™, one of the most extraordinary medical devices available to ALS patients, is FDA-approved and available from Synapse Biomedical. Invented and pioneered by esteemed physician and surgeon, Dr. Ray Onders of Case Western Reserve University, Cleveland, the system enables ALS patients with mild to severe respiratory distress to breathe in a more normalized manner through a minimally invasive surgical implantation.  ALS 患者が利用できる最も優れた医療機器の 1 つであり、FDA の承認を受けており、Synapse Biomedical から入手できます。このシステムは、クリーブランドのケース ウェスタン リザーブ大学の尊敬される内科医であり外科医であるレイ オンダース博士によって開発され先き駆けとなったもので、低侵襲の外科的移植によって、軽度から重度の呼吸困難を伴う ALS 患者がより正常な呼吸を可能にします。NeuRx Diaphragm Pacing System 

横隔膜ペーシングのしくみは?

横隔膜を電気刺激で動かして、人工呼吸器をつかわず呼吸する装置です。

横隔膜ペーシングのほかに、体内植え込み式横隔膜ペースメーカと、脊髄刺激装置を利用した横隔神経ペーシング装置(こちらも植え込み式)があります。

日本国内で保険収載されているのは横隔膜ペーシングが1機種のみです。

その他の装置は保険適応外ですが、担当する医師によって国内使用された例や、患者が渡航して横隔膜ペーシング植え込み手術を受けた例が数例あるようです。

それには2方式、2パターンあるので分類しながら説明してみます。

横隔膜ペーシング

横隔膜にペーシングリードを4本植え込み、体外式の横隔膜ペースメーカから電気刺激を送って横隔膜を動かす方式です。

こちらが手術動画(アニメーション)です。

現在国内で認可を受けているのがこちらです。

横隔神経ペーシング

横隔膜に向かっている横隔神経へリードを固定して、横隔神経をペーシングすることで横隔膜を刺激します。

脊髄刺激装置を流用した横隔神経ペーシングが20年前に国内でも研究使用されました。

また、海外で使われているエイブリー社の横隔神経刺激装置もこれにあたります。

体内植え込み式

体の中に植え込んで、皮膚を経由して体内から体外へペーシングリードが貫いていない方式です。

こちらはスピリット(エイブリー社)の装置取り扱い説明です。

脳神経外科などで使われている脊髄刺激装置を流用したものや、エイブリー社横隔神経刺激装置がこちらにあたります。

体外ペーシング式

体外にある装置から体内へペーシングリードがつながっている方式です。

現在国内で認可を受けている装置がこの方式です。

この体外ペーシング方式は日本国内だけでなく、欧米・南米・アジアでも広まりつつあります。下は香港大学の例。

Diaphragmatic pacing for high cervical cord injury Department of Orthopaedics and Traumatology https://www.ortho.hku.hk

横隔膜ペーシングの良いところ、悪いところは?

横隔膜ペーシングも横隔神経ペーシングも同じ良い点と悪い点があります。

横隔膜ペーシング・横隔神経ペーシングの良い点

  • 陰圧呼吸である(空気を押し込むのではなくて、肺に空気を吸い込む)
  • 感染症(肺炎)低減、たん吸引・介助者負担軽減
  • 人工呼吸器に比べて軽量
  • 乾電池駆動なので、災害時の電源確保が容易

横隔膜ペーシング・横隔神経ペーシングの悪い点

人工呼吸器でも同じかもしれませんが、

  • 自発呼吸とペーシングの呼吸が重なることがある
  • 装置に合わせて、発声する必要がある
  • なにかあったときのバックアップは人工呼吸器に頼らざるを得ない
  • 手術によるペーシングリード植え込み手術が必要

こちらは、植え込み手術の一場面です。

Laparoscopic Diaphragm and Gastric Pacing World Laparoscopy Hospital

横隔膜ペーシングで日常生活気を付ける点は?

現在国内で使用可能な横隔膜ペーシングは、防水仕様ではないため水濡れの注意が必要です。

  • 装置やケーブルの水濡れ
  • ケーブルの破損(コネクター部の曲がりなど注意)
  • 皮膚トラブル(ペーシングリードが皮膚から出ているため)

横隔膜ペーシングを20年以上使い続けている方もいらっしゃいます。

ペーシングリードの断線や装置の故障などは、補修できる場合があります。

何かあったときの対応は、予備の横隔神経ペーシング装置を用意したり(2台ある)、ケーブルの予備を使うことでかなり回避できます。

横隔膜ペーシングはすべての人が使えるのか?

適応疾患は「脊髄(頚髄)損傷」と「中枢性低換気(症候群)」ですので、病院で診断された場合は、横隔膜ペーシングの使用が可能です。

ただ、人工呼吸器のほうが病院にとって導入しやすいため、担当医師から「人工呼吸器が必要です」としか言われないかもしれません。

そのときは、「横隔膜ペーシングという選択式はありませんか?」と聞き返してもいいと思います。

まとめ|人工呼吸器が必要になったときの生活は?>QOLが低下、横隔膜ペーシングに頼るのも一案

交通事故で首と頭を強く打ち、人工呼吸器が必要になった方がいらっしゃいました。

意識が戻ったときに「この管を外してほしい」「もう殺してくれ」と願っていたそうです。

その声にならない悲痛な思いの中から「横隔膜ペーシング」を見出し希望の光を見つけられたのは、その方のお父様でした。

インターネットで検索し、30か所くらいの病院へ電話し、手術できる病院へ数度転院しながらやっとの思いで、手術までこぎつけられたのだそうです。

このような思いのご家族やご本人の苦痛に少しでもよりそっていければと思います。

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